社会化トレーニングをする際の注意点
猫の親子は抱いたり、抱かれたりすることはありませんし、特に見知らぬ人に抱かれたり、しつこく触られたりすることは本来猫が好むことではありません。
子猫を拘束せず、怖いときには遠ざかる自由を与え、自分から近づいて来て遊んだり、好物を食べるように誘導しましょう。
子猫が慣れて自分からすり寄ってくるようになればなでたり、抱いたりするようにしてもいいでしょう。
さまざまな刺激に慣らす
社会化期の子猫はまわりの環境に対しても柔軟で、この時期に馴染んだものには大人になっても過剰な反応を起こしにくくなります。
したがって、この時期にいろいろなものに慣らすことで、その後に出会うさまざまな環境中の刺激を受け入れやすくすることができます。
大きな音を怖がる猫は少なくありませんが、幼い時期からさまざまな音に慣らしておくと予防効果がある。
※ただし、子猫が怖がるほどの大きな音や強い刺激は逆効果になりますので、子猫の様子をよく見ながら無理をせず少しずつ慣らす必要があります。
キャリーケースでの移動が大きなストレスにならないように、キャリーケースにいれて友達の家などさまざまな場所に連れて行く練習をするのもよいでしょう。
知らない人を怖がらないように
子猫の教育の中で一番大切なことは、人を怖がらないように育てることです。
猫が人間社会で生活していく以上、他人との接点なしに生涯を終えることはできません。
また、猫は怖いという気持ちが攻撃性の引き金になる場合が多いので、人を怖がるということは人を攻撃する可能性も秘めています。
来客から食事を与えてもらったり、おもちゃで遊んでもらうなどすると、来客を楽しみにするようになります。
これらの社会化トレーニングは子猫の時期だけではなく、その後も継続する事が大切です。
社会化期の重要性
猫の性格形成には幼いころの生活環境が大きく影響します。特に社会化期と呼ばれる時期(猫では2~7週齢) は非常に大切であると考えられます。
この時期には猫以外の動物のさまざまな種類の刺激(音やにおい、触られること、家以外の場所など)に慣らすのに適した時期でもあります。
社会化期を過ぎると徐々に見知らぬものに対する警戒心も強くなり、仲間以外のものを受け入れにくくなります。
最もさまざまなものに慣れやすいとされる社会化期には一日一日を大切に、子猫に安心できる環境で楽しい経験ができるように配慮しながら育てる必要があります。
そして、社会化期を過ぎても同様の努力を続けることによって、安定した性格の猫に育てることができます。
猫が快くケアを受け入れる方法
(全部一度に行う必要はありません。嫌がる前に終わるようにしましょう)
体中を触る
猫のペースに合わせて練習をすることをお勧めします。
猫がリラックスしているとき、ゴロゴロと甘えてきたときにやさしくなでることから始めましょう。(頭部→背中→尻尾の先→顔→顎の下)少しずつ時間を延ばしていくと受け入れてくれるでしょう。日頃から体中を触り健康チェックを習慣付けましょう。
※猫が尻尾をパタパタと振るようなしぐさを見せたら中止、または触られるのを好む部位に戻ってください。
ブラッシング
快く受け入れさせるコツ
- 最初は猫が機嫌よく寝ている時間などリラックスしているときに短時間でブラッシングをし、少しずつ時間を伸ばしていく
- 猫を押さえつけるなどして、無理やりすることはしない
- 頭部など猫が気持ちよく受け入れる場所からブラッシングし、喜んで受け入れるようにしていく
- ブラシを嫌がる場合は、最初は手ぐしでなでることからはじめたり、歯ブラシブラッシングなどで慣らしていくのも良い
爪切り
大切なことは、「最初に肢を触ること・爪を出す行為に慣らした後に爪を切ること」
- 眠っているときにやさしく撫でたりしながら肢を触る練習をする
- パッドの部分を上下から指でやさしく押して、爪を出す練習を一本の指から全部できるようにする
- 猫がリラックスしているときにそっと爪の先の部分だけ切ってすぐ撫でたりする
- 全部一度に切れるようになることを急がず、少しずつ切れる指の数を増やす
失敗しない爪切りのコツ
- 上の準備トレーニングを十分行ってから爪切りをする
- スイッチオフのとき(寝てゴロゴロいっているようなとき)に行う
- 機嫌がよい状況の間に終わる。
たとえ一本しか切れなくてもスイッチがオン(ゴロゴロがとまる、立ち上がる) になったら爪切りはやめ、機嫌をなおして終わりにする
歯ブラシ
- 猫が気持ちよく寝ているときに歯ブラシでブラッシングし、歯ブラシブラッシングを好きにさせる
- その後、少し歯に当てすぐに他の好む部位を歯ブラシでブラッシングする
- 少しずつ歯に当てる時間を延ばす フード
好物を用いての練習法
- 口を触ってフードを与えるという練習繰り返し、口を触れるようにしておく
- 歯ブラシを一瞬当ててすぐにフードを与えるという練習を繰り返す
- 少しずつ歯に当てる時間を延ばす
ハンドリングの重要性
- 病院で身体を触ると怒るので、診察や治療が困難
- 自宅でも体を触ると怒るので、異常に気付くのが遅れた
- 病院で渡した薬を飲ませることができない
- 自宅で点眼や点耳などができない
- 歯磨きをしていないので、歯石が付いたり歯周病を起こしている
以上の問題はハンドリングの練習をすれば予防できます。
猫のニーズを理解する
飼い主さんは猫の習性をよく理解し、彼らが人間社会でも快適に生活できるように工夫してあげる必要性あります。
- バランスのとれた食事
- 適度な運動
- 安心して寝られる場所
- 本能を満足させる遊び
- 社会的刺激を含む豊かな環境
- 適切なメディカルケア
ニーズを満たす
動物福祉の5原則(国際的に認められてる動物福祉の基準)
- 飢え、乾き、栄養失調、(つまり不適切な栄養管理)からの自由
- 不快な環境(汚れた場所等)からの自由
- 痛み・けが・病気(身体的なもの)からの自由
- 恐怖・不安(精神的なもの)からの自由
- 本来の行動様式を発現できる自由(サルが木に上る、鳥が空を飛ぶなど)
中でも飼い主さんの多くが忘れがちなのが⑤の自由です。
ペットが幸せに暮らせるように、飼い主さんにとって不都合でなく、他人に迷惑をかけないかたちで、できるだけ自然に近い行動をとれるように工夫してあげることはとても大切です。
室内飼育の勧め
- 交通事故にあう
- 猫に多いさまざまなウイルス感染症
- 猫同士のけんかなど
そして外猫の寿命は、わずか4年程度と言われています。
また、全国の自治体には数々の苦情が寄せられます。
- 猫の排泄物の問題
- 夜間や発情期の泣き声
- 庭や畑、ゴミ集積所などを荒らす
- 小鳥や鯉などを襲う
すなわち猫を外出させることによって、飼い主さんと猫自身が不幸になるばかりか、近隣の人にも迷惑をかけていることも多いのです。
従って、子猫の時から室内で快適に暮らせるように環境を整え、室内飼育に適応させておくことが大切なのです。
ただし、室内飼育は刺激不足になりやすいので
- 子猫の正常な行動の発達の妨げ
- 過剰なグルーミング
- 飼い主さんへの攻撃行動
- 肥満…
室内の環境を整えるだけではなく、猫とおもちゃを介して遊ぶなど十分猫に時間を費やしてあげる必要があります。
こころのワクチン
(こころとからだの両方が健全であって初めて幸せに暮らすことができます。 問題行動が原因で、飼い主が不幸にならないために行う子猫の教育のこと) 人間のペットとして生活する猫は、本来の生活とは全く異なる人間社会の環境に適応して生きていかなければなりません。
猫としてごく自然な行動も、人間社会では受け入れられないこともあります。
生涯飼い主さんとともに幸せに暮らすためには、子猫の間に、生涯暮らしていく環境に適応できるようにしたり、社会性を身につけさせる機会を与え、健康管理に必要なケアに慣らしておくことが大切です。
「飼い主が守るべき3つのルール」を守るために、飼い主さんがしなければならないこともあります。
- 自分に合ったペットを選ぶこと
- ペットのニーズを満たしてあげること
- ペットの習性に応じて人間と暮らしていく上で必要なしつけをすること
中でも最も大切だと感じるのは②のニーズを満たすという点です。
ほとんどの猫は、十分ニーズが満たされていれば問題行動を起こすこともなく幸せに暮らしてくれます。
そしてゴロゴロとのどを鳴らす姿や幸せそうな寝顔が私たち飼い主にこの上ない幸福感を与えてくれるのです。