糖尿病
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ペットの糖尿病
ペットにおいても、近年糖尿病が増えているのをご存知でしょうか?
犬と猫の糖尿病ではそれぞれ原因が異なります。一度発症すると毎日の注射や食事管理が長時間続きます。
合併症として白内障を発症し、視力を失うケースも多くみられます。
このように糖尿病は犬や猫だけでなく、飼い主さんにとっても、労力的、精神的、経済的な負担がとても大きい病気です。
犬と猫の糖尿病を理解し、予防できるところはぜひ予防してあげましょう。
糖尿病について
おもに中高年の犬がかかります。人間の成人の糖尿病とは違って、肥満や生活習慣とは関係なく突然発症します。
糖尿病においては詳細な診断から治療初期の食事療法、インスリンの選択や血糖曲線の作成、そして治療効果の判定に及ぶ全てのステージを、かかりつけの先生からご紹介を頂きまして行います。
また、診断結果や治療方法をお知らせして、かかりつけ病院にて血糖コントロールができるようにすることも可能です。
“糖尿病の治療は低血糖発作を起こさないようにあまり血糖値を下げてはいけない” “糖尿病は合併症が出やすいからしょうがない” などという説明を受けながらインスリンを毎日注射している飼い主様が多いようです。
糖尿病の合併症は適切な食事療法と最適なインスリンを適切な量摂取すれば予防することが出来ます。
糖尿病の原因
何らかの理由でインスリンの働きが弱まってしまうと、本来細胞の中に入るはずのグルコースが血液中に残ったままになり、血液中の糖濃度が高くなってしまいます。この状態を高血糖(こうけっとう)といい、長期的に続くと体の至る所に障害を引き起こします。膵臓の機能が壊され、インスリンが出なくなることで症状を呈するものが「I型糖尿病」(インスリン依存型糖尿病, IDDM)、膵臓は保たれているものの、その他の理由で症状を呈するものが「II型糖尿病」(インスリン非依存型糖尿病, NIDDM)です。
糖尿病とは、すい臓のインスリン分泌が不足したり、インスリンがうまく細胞に作用しなくなったりすることで、血糖が細胞で利用されず、血糖値の高い状態が続く病気です。血糖値が高くなると、尿中にブドウ糖が出てしまうため、糖尿病と呼ばれます。
犬の糖尿病
犬の糖尿病はヒトの1型糖尿病※に近いタイプが50%と言われています。
他には、すい臓の病気や、クッシング症候群(副腎の病気)に伴う糖尿病もみられます。
犬の糖尿病は原因に関わらず、ほとんどのケースでインスリンを作れなくなるため、
生涯に渡るインスリン注射が必要になります。
※ 1型糖尿病・・・インスリンを作るすい蔵の細胞が壊れ、インスリンが作れなくなる病気です。
先天的に膵臓の機能不全があり、インスリンを産出できないという犬もいます。
雌犬の避妊の重要性
雌犬の避妊の重要性犬においては、避妊をしていない雌犬に糖尿病が多く見られます。
診療を受けた糖尿病の犬のうち、63%が避妊をしていない雌犬というデータがあります。
猫の糖尿病
猫の糖尿病の最も大きな原因は肥満です。
猫の糖尿病の80~95%は、ヒトの2型糖尿病※に近いタイプと言われています。
※ 2型糖尿病・・・食べ過ぎや運送不足などの生活習慣が原因です。日本人の95%以上はこのタイプです。
犬の糖尿病と違い猫の糖尿病は病態が複雑で、治療も難しいのですが、その原因の一つが“膵炎の存在”にあります。
猫の膵炎は食欲不振だけで、ヒトや犬でみられる嘔吐、下痢、腹痛が見られないことがよくあります。また、血液検査でも膵炎を診断することは難しく、未だに確定診断はおなかを開けて直接膵臓を調べるしかないといわれています。
ですから糖尿病と診断し、少しでも膵炎を疑うような症状があれば糖尿病の治療と並行して膵炎の治療を開始し、その反応を見ながら診断(治療的診断)をするようにしています。
そしてこのタイプの糖尿病は膵炎が直ることによって徐々に血糖値が正常化することが多く、インスリン注射を行っていてもいずれ離脱することが出来ます。しかし、今まで経験した猫の膵炎は必ず再発していますので、直っても継続した治療が必要となります。
糖尿病の症状
- 頻尿(おしっこの量や回数が多い)
- 毛艶が悪い
- 水をたくさん飲む
- 食事の量は変わらないのに痩せてきた
- 黒い目が白っぽくなってきた
- 猫:かかとを付けて歩く
- 猫:ジャンプできない・しない
- 下痢
- 嘔吐
来院のタイミング
すぐに診察した方がいいケース
症状の項目が2つ以上と、さらに食欲が減っている場合には早急に受診することをおすすめします。
数日中に診察した方がいいケース
水をたくさん飲む、おしっこの量が多いなどの症状でまだ元気はしっかりあるものに関しては急がなくても良いと思いますが、体重減少、毛艶がわるいなどの所見がプラスで出ている場合は早めの受診をおすすめします。
糖尿病の治療
食事療法
食事量が多すぎると、血中に放出される糖分も増えますので、食事の質と量には十分な配慮が必要です。獣医さんとよく相談の上、運動量とあわせて毎日の摂取カロリー数、給餌回数、タイミングなどを設定します。また近年は療法食の一種として糖尿病や肥満に特化したものもありますので、獣医師に相談の上、導入するかどうかを決めます。
経口血糖降下剤の投与
インスリン投与
人工的に生成したインスリンを皮下注射します。獣医師の指示を受けた飼い主が、毎日の日課として行うのが普通です。効果が出るのは注射後3時間たったころからで、効果はおよそ18~24時間持続します。また最も効果が高いのは注射後8~12時間後です。
インスリンの注射量は、多すぎても少なすぎてもいけません。多すぎると低血糖発作(ていけっとうほっさ)を起こし、意識を失ったりけいれんを起こしたりすることがあり、逆に少なすぎると、血糖値が十分に下がらない状態になって注射した意味が薄れてしまいます。インスリンの適正量は、その日の運動量や摂取カロリーによって左右されますので、獣医師とよく相談の上、決める必要があります。